人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ナカムラテツオのヒトリゴト


by fullnelson65
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

「RAY」を観て思い出した人

レイチャールズの伝記映画を観た。
まず、そのソックリぶりにビックリ!
ただのモノマネでもなく、憑依しているかのようだった。

コンプレックス、エゴイスト、女好き、ジャンキー。。。等々。
レイにまつわる逸話はあまりに多い。
そこが曖昧にされず、正直に描かれている事にまず、安心。
観る気になった。

妻はひどく嫌な気分になる映画と言っていた。
レイチャールズが嫌いになるとも、久しぶりに見たクズ映画とも言っていたなぁ。
いやぁ、キビシイです。(笑)

確かにそこに描かれている、レイは最悪でいやな男。
映画としても正直??な所は多々あるが、
そこにある音楽は、只々、素晴らしく、そして熱い。
まぁ、音楽の才能があり、経済的にも成功して金を持っている奴なんて、
ろくなモンじゃないだろ。
ほぼ生活の全てが音楽の為にある訳で、
普通の一般人のような社会性も乏しい。
そんな奴の所になぜ人が集まるのか?
そこに並外れた音楽が、輝いているからだ。ホントにそれだけの事。
それだけ吸引力のあるモノが創りだせるのは、
やはり選ばれた人間なのだろう。

この映画をみて、ある人を思い出した。

俺は20代始め頃、その界隈では大御所で通っていた、
Tさんというギタリストと仕事をしていた。
ジャンキーで、アル中。
神経症気味で気が小さくて、いつも虚勢をはっていたTさんに、
若くて未熟な俺は随分と苛められた。

そんなヤク中男も、ひとたびギターを持つと豹変した。
まわりのものを全て巻き込むような音を出した。
いまだにあの人の出す音以上のモノを聴いていないのは、
彼もまた選ばれた人だったのかと、ふと考えたりもする。

ツアー先では、連日飲みに連れマワされた。
Tさんには土地土地の女がいて、いつも違う女を連れ歩いていた。
ある打ち上げ終了後、名前も知らない女とTさんと三人で、
ホテルの部屋で飲んでいた。
すでにベロベロラリラリのTさんはギターを手に、
やはりその状態でも最高の音を出しながら、
即興のブルースを歌っていた。

「俺は選ばれた人間だから 好きなように生きる 誰の指図も受けねぇ、、、」

みたいな歌だったな、確か。
40近くにもなって何言ってるんだ、この男は?と思った。
ホントに人間として大嫌いな人だったからなぁ。
だけど、ギターはサイコーだった。大好きだった。
レイチャールズの映画を観て、彼とものすごくダブってしまった。

バンドツアー終了後、俺は体調と精神の調子を崩し、
音楽活動を一時、リタイア。

その後、一回も顔を合わせる事もなく、20年近く経ってしまった。
最近は名前も聞かなくなったが、
とうとう、くたばっちまったのかなぁ、あの親父。
会いたいとは思わないが、あの音は生で聴きたいなぁと、少し思った。
by fullnelson65 | 2005-03-26 16:11 | 映画